抱えていた課題

 働き手の高齢化による、人手不足に直面していました。
 

取組とその成果

九州初 日本酒蔵 女性杜氏が誕生するまで
 水に恵まれた豊かな土地で、日本有数の酒どころである筑後地方。若波酒造は100年の伝統を持つ、大川市の酒蔵だ。若波酒造の次女として生まれた今村友香さんは、2006年に九州初の日本酒蔵 女性杜氏となった。全国でも珍しい女性杜氏に、今村さんはいかにして就任したのか。
 蔵元の娘ではあったものの、日本酒造りには全く縁のなかった今村さん。学芸学部へと進学し、就職も内定した大学4年生のある日、「お父さんの体調がすぐれない。大川へ戻って手伝ってくれないか」と実家から電話があった。悩んだ末に、1年間だけという約束で家業を手伝うことにした。
 大川に戻ってからの半年間、事務処理中心の仕事で、モチベーションも上がらず、苦痛の日々が続いた。しかし、酒造りが始まった冬に今村さんの気持ちは一変する。蔵が眠りから覚めるのと同時に、今村さんの中に眠っていた酒造りへの情熱も目を覚ました。「自分も蔵の一員になりたい」と強く感じたという。
 酒造りを一から学ぶため、文献や通信教育で知識を深めることはもちろん、広島にある酒類総合研究所へも6年間通い続けた。初めは様子を見ていた周囲の男性も、今村さんの本気で学ぶ姿勢を目の当たりにし、積極的に色々と教えてくれるようになったという。
 こうして、経験と実績を着実に積み重ね、今村さんは九州初の日本酒蔵 女性杜氏となった。
女性も参画できる酒づくりにむけて
若波酒造合名会社
 今村さんが酒造りを始めたことで、若波酒造では多くのことが変化した。
 まず、道具を積極的に導入するようになった。女性の体格でも作業しやすいように箱の大きさを小さくしたり、重い荷物を運ぶための台車を導入したりした。道具は近隣の家具職人にお願いして作成したというのも、大川市の酒蔵ならではだ。道具を利用するようになったきっかけは女性である今村さんが蔵に入ったことであったが、結果的には男性の体力的な作業負荷を下げることにも繋がった。
 次に、造り手として今村さん以外の女性が加わった。夏場にはラベリングを行っているパートの女性が、自ら手を挙げて冬場の酒造りに参加している。仕込みが始まる繁忙期には、勤務時間を柔軟に設けるなど、会社としてもバックアップする体制を整えた。
 このような取組を実践していくことで、若波酒造では、性別による仕事の決めつけを行わずに、職域を広げる姿勢を従業員にも浸透させているという。今村さんというロールモデルをきっかけとして、若波酒造はこれからの100年の歴史を築いていくうえで、男女関係なく活躍できる会社を目指している。

トップの思いを伺いました

会長 今村 壽男 氏、製造統括 今村 友香 氏
会長 今村 壽男 氏、製造統括 今村 友香 氏
 日本は少子高齢化による人手不足ですが、酒蔵も同様です。今後は女性の活躍が無くてはならないと感じています。男女関係なく、やる気・熱意のある人が仕事をできる環境をつくっていきたいと考えています。(会長 今村 壽男氏)

 日本酒造りの世界がそうであったように、男性社会と思われている業界でも女性が活躍できるフィールドはまだまだあるはずです。男女が性別関係なくそれぞれの持ち味で活躍できれば、より良い社会に繋がっていくと思います。今後は、製造統括という立場で、自らの経験を活かしながら後進の育成にも力を入れ、女性の杜氏が当たり前になればよいと考えています。 (製造統括 今村 友香氏)

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