アンコンシャス・バイアスは、脳の「高速判断」「知的連想」の機能です。脳は多くのエネルギーを消費する臓器であるといわれています。そのため進化の過程で、できるだけエネルギーを使わずに物事を判断する脳の省エネ機能を獲得してきました。いわばアンコンシャス・バイアスは人類の生存戦略の結果ともいえます。
アンコンシャス・バイアスは、多くの過去の経験や周囲の意見、日々接する情報から形成されるもので、誰もが持っているものです。
しかし、自身のアンコンシャス・バイアスに無自覚な場合、判断の単純化や決めつけの助長といった悪影響を及ぼす可能性があります。
アンコンシャス・バイアスには様々な性質のものがあり、特に近年では、脳科学、認知科学、行動経済学等、複数の分野で研究され、その分類が進んでいます。ここでは、その代表例をいくつかご紹介します。※ここで紹介している以外にもアンコンシャス・バイアスと分類される様々な例があります
人の属性や一部の傾向に対する先入観や固定観念のこと。特に、性別に対するステレオタイプは「ジェンダーバイアス」と呼ばれ、性別固定役割分担意識を助長する思い込みの一つとして注目を集めています。
例)
自分より立場が弱いと思う他人に対して、本人に確認せずに、先回りして不要な配慮や気遣いをすること。
例)
自分の実力による成果を肯定できず、自分の成果を評価されると、相手をだましたような感覚に陥ること。
例)
権威のある人や専門家の言動はすべて正しいと思い込み、深く考えずに信用してしまうこと。
例)
無意識のうちに自分の考えを肯定するような情報だけに注視し、逆に自分の考えに合わない情報は軽視する傾向のこと。
例)
予期しづらい事態、危機的状況を過小評価し、これは正常の範囲であり「自分は大丈夫だ」と思い込むこと。
例)
ある集団に所属することで、集団内の人たちの言動に同調し、同じように行動してしまうこと。
例)
近年、認知心理学、脳科学、行動経済学などの研究が進んでいます。脳の仕組みや認知機能が解明され、アンコンシャス・バイアスが起こるメカニズムも分かってきています。研究結果はビジネスにも応用されるようになりました。
人権意識が浸透し、ジェンダー平等やダイバーシティ推進の動きがグローバル化しています。その流れの中、国際機関や海外メディアから「日本の常識」に対して警笛が鳴らされています。また、国内でもCMやSNSの発信が炎上するケースも散見されています。
1990年代には、専業主婦世帯数よりも共働き世帯数が逆転して増え、学校教育では技術・家庭科が男女別修から必修科目へと変わりました。時代の変化に合わせて私たちの価値観や考え方も急速に変化し、世代間ギャップが生じています。このような世代間ギャップにより、これまでの役割や判断のパターンを当てはめることが合理的とはいえないケースが増えています。