アンコンシャス・バイアスって何?

アンコンシャス・バイアスとは

  • 無意識の思い込み・偏見のこと

    アンコンシャス・バイアスは、脳の「高速判断」「知的連想」の機能です。脳は多くのエネルギーを消費する臓器であるといわれています。そのため進化の過程で、できるだけエネルギーを使わずに物事を判断する脳の省エネ機能を獲得してきました。いわばアンコンシャス・バイアスは人類の生存戦略の結果ともいえます。


    アンコンシャス・バイアスは、多くの過去の経験や周囲の意見、日々接する情報から形成されるもので、誰もが持っているものです。
    しかし、自身のアンコンシャス・バイアスに無自覚な場合、判断の単純化や決めつけの助長といった悪影響を及ぼす可能性があります。

アンコンシャスバイアスの例

アンコンシャス・バイアスには様々な性質のものがあり、特に近年では、脳科学、認知科学、行動経済学等、複数の分野で研究され、その分類が進んでいます。ここでは、その代表例をいくつかご紹介します。※ここで紹介している以外にもアンコンシャス・バイアスと分類される様々な例があります

ステレオタイプバイアス
  • 人の属性や一部の傾向に対する先入観や固定観念のこと。特に、性別に対するステレオタイプは「ジェンダーバイアス」と呼ばれ、性別固定役割分担意識を助長する思い込みの一つとして注目を集めています。


    例)

    • 男性は外で働き、女性は家庭を守るもの
    • リモートワークは生産性が下がる
    • 九州の人はお酒に強い
  • 慈悲的差別

    自分より立場が弱いと思う他人に対して、本人に確認せずに、先回りして不要な配慮や気遣いをすること。

    例)

    • 障がいのある人は助けなければ(本人は同等に扱ってほしいのに)
    • 女性に負担はかけられない
  • インポスター症候群(詐欺師症候群)

    自分の実力による成果を肯定できず、自分の成果を評価されると、相手をだましたような感覚に陥ること。

    例)

    • 成果を出しても自分の功績とは思えない
    • 実力ではなく運がいいだけと自己を肯定できない
  • 権威バイアス

    権威のある人や専門家の言動はすべて正しいと思い込み、深く考えずに信用してしまうこと。

    例)

    • 専門家の意見に従っていれば間違いない
    • 上司の言うことはすべて正しい
  • 確証バイアス

    無意識のうちに自分の考えを肯定するような情報だけに注視し、逆に自分の考えに合わない情報は軽視する傾向のこと。

    例)

    • 自分の結論にそぐわない意見を無視する
    • 「こうだ」と一度決めたら、聞く耳を持ちにくい
  • 正常性バイアス

    予期しづらい事態、危機的状況を過小評価し、これは正常の範囲であり「自分は大丈夫だ」と思い込むこと。

    例)

    • 「うちは大丈夫」と、問題を先送りにする
    • 私に限って、災害に巻き込まれることはない
  • 集団同調性バイアス

    ある集団に所属することで、集団内の人たちの言動に同調し、同じように行動してしまうこと。

    例)

    • 別の意見があっても人に合わせる
    • 「みんなが言っている」ならば、それが正解だ

アンコンシャス・バイアスが注目される背景

・学際的に脳の認知メカニズムの解明が進んでいる

近年、認知心理学、脳科学、行動経済学などの研究が進んでいます。脳の仕組みや認知機能が解明され、アンコンシャス・バイアスが起こるメカニズムも分かってきています。研究結果はビジネスにも応用されるようになりました。

・世界的にジェンダー平等やダイバーシティ推進意識が高まっている

人権意識が浸透し、ジェンダー平等やダイバーシティ推進の動きがグローバル化しています。その流れの中、国際機関や海外メディアから「日本の常識」に対して警笛が鳴らされています。また、国内でもCMやSNSの発信が炎上するケースも散見されています。

・時代の変化と人の多様化が進み、世代間ギャップが問題に

1990年代には、専業主婦世帯数よりも共働き世帯数が逆転して増え、学校教育では技術・家庭科が男女別修から必修科目へと変わりました。時代の変化に合わせて私たちの価値観や考え方も急速に変化し、世代間ギャップが生じています。このような世代間ギャップにより、これまでの役割や判断のパターンを当てはめることが合理的とはいえないケースが増えています。

<参考文献>本コンテンツは以下の文献を参照して記載しています
イリス・ボネット(2018)『WORK DESIGN-行動経済学でジェンダー格差を克服する』(NTT出版)
上瀬由美子(2002)『ステレオタイプの社会心理学―偏見の解消に向けて―』(サイエンス社)
ギンカ・トーゲル(2016)『女性が管理職になったら読む本 「キャリア」と「自分らしさ」を両立させる方法』(日本経済新聞出版社)
クロード・スティール(2020)『ステレオタイプの科学―「社会の刷り込み」は成果にどう影響し、わたしたちは何ができるのか』(英治出版)
シェリル・サンドバーグ(2013)『LEAN IN リーン・イン 女性、仕事、リーダーへの意欲』(日本経済新聞出版社)
治部れんげ(2018)『炎上しない企業情報発信 ジェンダーはビジネスの新教養である』(日本経済新聞出版社)
ダニエル・カールマン(2014)『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?上・下』(早川書房)
守屋智敬(2019)『「アンコンシャス・バイアス」マネジメント 最高のリーダーは自分を信じない』(かんき出版)

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